2013年11月06日

オメガにまつわるマニアックで長ーい話


オメガにまつわるマニアで長い話

先日在庫のアルトサックス「セルマーUSA 162 オメガ」のオーバーホールが完成しました。
いやーーじゃじゃうまちゃんで直すのに苦労しました(笑)

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これから店頭に並ぶ予定ですー。



この楽器、結構珍しいもので資料も少ない為に、謎、諸説、俗説、伝説が色々。
ファンやマニア、業者の中でも見解が異なったりするというオモシロ楽器です。
せっかくなので、記録用に私なりに調べた見解を書いてみようと思います。


先に書くとこのオメガという楽器は「ブッシャーの工場で作られたmade in USA 最後のサックス」だと考えています。



※このお話の情報はアメリカから取り寄せたサックスと管楽器メーカーの大抵の事は載っているその名も「SAX&BRASS BOOK」が出典です。


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まずはセルマーUSAって何?ってところから、、、。

セルマー・パリ社はヘンリー•セルマーが1885年に興した会社。そして同年弟のアレクサンドル•セルマーがアメリカ「ボストン交響楽団」のクラリネット奏者となります。この弟が1904年にセルマーのクラリネットを売る為にニューヨークに作った会社が後のセルマーUSAとなります。
 
その後セルマーはサックスの製造にも力をいれ、1929年にアドルフ・サックス社を買収したり、歴史的名器といわれるマーク6を製造したりと、サックスを代表するメーカーにまで成長します。



そしてフランスセルマー・パリで製造したパーツを輸出し、アメリカセルマーUSAで組み上げるという方法をとったいわゆるアメリカン•セルマー(アメセル)の評価は今日にいたるまで、JAZZプレイヤーを中心に評価が非常に高く、市場の価格もその評価と人気を反映させたものとなっています。



こうして大きくなったセルマーUSA社は他のアメリカにあった楽器メーカーを次々と買収し、(バック、コーン、キング、ブッシャー等)ほとんどがセルマーUSA社資本の傘下に入ることとなります。 



この162オメガはセルマーUSAが独自に設計、製造をしたサックスです。 
フランスで設計、パーツ製造をした訳ではありませんので、「アメセル」とは違います。
オメガはセルマーUSAが買収した「ブッシャー」の工場のラインで作らせた物でしょう。
オメガがブッシャー工場で作られていたという証拠にU字管底部のパーツがブッシャーのそれと同じだったり、パーツにいくつかの共通点が見られます。


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そして製造番号のつけかたがブッシャー/バンディのナンバリングと同じです。ブッシャーはセルマーUSAに1963年に買収された後、しばらくはブッシャーブランドの名前のままで楽器を作っていた様ですが、設備、機械はそのままに、次第に安い材質を使ってスチューデントモデル(バンディーという名前で)を作らされる様になっていたとの事です。 (ちなみにセルマーUSAは1961年にバック社も買収しており、同じ様にバンディーブランドの金管楽器をバックにも作らせています。) 


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ではオメガはバンディー系統の安いスチューデントモデルの延長なのかというとそうではない。ブランド名をセルマーUSAとしている事から、スチューデントモデルではない、本気のサックスを作りたかった事が伺えます。コーン、キング、ブッシャー等に代表される、アメリカンサックスの系譜でありながら、それらアメリカサックスが廃れる原因ともなった名器セルマーマーク6の作りを取り入れ、最高のサックスを作りたい。そんな想いがあったのではないでしょうか?



今バンディーブランドは1990年に入ってから無くなり、生産ラインも商売上のコスト管理やブランド戦略の面から、セルマーUSAのサックスはアメリカ本国では行われておらず、ブランド名を変えて生産を台湾や中国に移しています。


こういった経緯から、wikipediaにある様に「最後のアメセル!」といったものだったり、ちまたで噂されている様に「アメセルを辞めた職人が意地で作った!」という話ではないと思うのですが、「スチューデントモデルではない最後のmade in USAの楽器」であるという事、「ブッシャーの親戚」と言って差し支えない事、等は確かな様です。



オメガは本数も少なく、ブランド戦略的に中途半端に失敗しており、理念は良かったのだと思いますが,一旦失われた技術はなかなか元には戻らず、、やはり作り手の技術不足によるところが大きい様で、だんだんと作りを変えつつ、その後最上位機種という位置づけもあいまいになっていき、なくなってしまいました。セルマーUSA社としての最上位機種という位置づけで、本当にオメガシリーズと呼べるサックスは、モデル名アルトは162、テナーは164といい、製造番号820,000番から8246××番まで存在するサックスのことです。





とまあ、、長くなりましたが、オメガとはこんな楽器の様です。 
私の拙い英語とグーグル翻訳先生、そして色々な情報を集めてみるとこのような結論にいたりました。異論、その他推察、ある方是非コメント下さいませ。
セルマーUSAに勤めていた人がいたら聞いてみたいですね、ここらへんの詳しい事。


こういった経緯にロマンを感じてしまうのは私だけではないはず。
ムラムラときちゃいます。笑


さて楽器を見てみると、キーの取り付けかたやキーポストの関係性がわりと「雑」です。笑
作りがあまりよろしくない。。

この雑さ、修理するのにとっても苦労した部分でした。キーとキーが干渉し合ってうまく動かない、直したら今度は逆側が干渉してしまうと行った具合に、あちらを立てればこちらが立たず状態。 
キーを曲げ直したり、削って整形したりと、まるで一本楽器を作り直している様な感じでした。
もともとブッシャーにあった金型を利用しつつ、でもなんとか無理矢理セルマーの様な作りにした。そんな雰囲気があります。
さらに製造段階からついていたと思われるパッドは、安っぽいパッドのうえ、全くと言っていい程ラックが入っておらず、スカスカ、、、 スチューデントクラスの楽器作りになれすぎてしまったのか?ブッシャーが買収され20年も立った頃の楽器なので、製造ラインの現場には昔の技術はほとんど残っていなかったのであろうか、、。


しかし、、、手のかかる子はなんとやらで、妙にこの楽器に愛着を持ってしまいました。

アメリカの誰かが思い描いた、でも時代の波にのまれ、完成とはならなかった理想のアメリカンサックス、、、、。こいつをあっしがよみがえらせてみせようじゃありませんか!!こいつはおもしれえ!ってんで頑張って修理いたしました。笑

楽器を1から組み立て直す勢いで、板金し、キーを曲げ直し、削り、整形し直し、、キーのガタ一つ無く組み上げ、シャヌー製のパッドに付け替え、大手術の末完成いたしました。大変でした。


そして完成したオメガ。



かっこいい。。。。。笑


アメセルの様なダークで渋いラッカー。

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マーク6の様な小さなテーブルキー。

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ネックのロゴ。

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管が太い、ベルが大きい、その他色々相まって、凄いパワフルで野太いサウンドを奏でてくれる楽器です!!JAZZなどにはもってこい!! ブッシャーとセルマーのハイブリットな感じが素敵です! まさにアメリカンサックスの音色にセルマーの操作性!


この個体の製造番号は821,171番。彫刻やHigh F♯キーに貝が付いていなく、角の丸い長方形であることからも間違いなく初期の162であると言えます。

それがなんとっ!!!!!

189,000円!!!

こういった珍しい楽器の値段をつけるのは難しいのですが、
決して高い値段ではないと思います。少なくとも10万円分以上のリペアは施してあります。笑

ご興味のあるかた是非ご連絡下さいませー!! 





posted by PORTE at 02:49| Comment(2) | サックス
この記事へのコメント
いつもお世話になっております、石森裕子です(^^) お陰様で先日のコンサートも無事に終了しました。またお店に伺いますね!

しかしなんだかスゴイ楽器ですねーオメガ。。私は楽器の種類とか不勉強であまりわからないのですが、コアなところに足を踏み入れてしまったら大変そうですね(^^;; そしてよくわからないけど価格設定がだいぶ低そうです!

先日ファブリス・モレティがリサイタルでビュッフェの新しい楽器『senzo』を御披露目していました。素晴らしい音色と音楽でしたー(^^)
Posted by いしもりゆうこ at 2013年11月09日 09:17
いしもりさま> お世話になっております!  1日の演奏会にはお伺いできず残念でした汗 またの機会にお伺いします!

オメガは面白い楽器ですね!そして値段設定がお店によって一番ばらつきのある楽器かもしれません。この時期のモデルとしたらうちはかなり破格だと思います。

『SENZO』非常に気になる楽器です! 日本語の「先祖」から名前を付けととかなんとか、、。
Posted by すぎもとけん at 2013年11月15日 13:52
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