2015年04月16日

キーの位置と動き〜 サックスのキーの運動を考える その2

前回からの続き。


マーク7はマーク6よりも右手小指のキーが一センチ遠い所にある。



なぜ1センチ遠い所にあるのか? 

このキーをこの場所に作ったマーク7の設計者はどういう事を考えていたのか?

という事を想像してみたいと思います。



さて、あらためて、マーク6とマーク7の小指を観察してみる。



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マーク6



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マーク7






マーク6はLowCとLowE♭が同じ一本の軸から伸びてできており、指で押さえる部分のテーブルも、根元に近い位置から直接溶接されていることがわかる。


マーク7のLowCとLowE♭はそれぞれの軸が独立している。 さらに押さえるテーブルは、軸からのびたアームの上に溶接されている。




ちょっと脱線しますが、


サックスのキー(フルートも同じだけど)は回転運動を利用した機構になっている。

機械力学の話になるのですが、回転運動における 力 とは ”トルク” と呼ばれている。






トルクNは次のように定義される。

N=r×F

ここでFは物体に加わる力、rは回転の軸からみた力の加わる点までの距離(ベクトル)を表す。トルクNはベクトル量であり、Nの向きを進行方向とする右ねじ回りに物体を回転させる効果をもつ。Fが等しいとき、腕の長さrが長いほうが物体を回転させる効果 (N) が大きい。 
  ーWikipediaよりー



丁寧に説明しようとすると逆に分かりにくいかもしれませんが、、、


つまり、アームの長さが長ければ、同じ力、同じ角速度で押さえたときでも運動効率が良い。 ということで。

話は戻り、、、


サックスのキーも同じという事です。





このLowE♭の部分はクローズキー。

低音部でカップも大きいため、押さえるバネの力は必然的に強く無くてはならない。



が、しかし小指はただでさえ届きにくく、さらに力の弱い部分。 


なるべく力は弱い方がスムーズに動作するのでバネは弱い方が良いが、、

バネを弱くすると抑えが甘くなり、低音の振動に負けて開いてしまう恐れが出てくる。。。





が、

アーム部分を長くして、トルクがよりかかる構造にすることによって、この相対する関係を崩さないままキーを押し易くする事が可能なのです。



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マーク6


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マーク7   2軸を採用したことによって、アームの長さを稼いでいる。







また、同じ開きを必要とした場合でもアームの長い方が同じ運動量に対して、動く角度が浅くて済む。

つまり押したときのストロークの深さが浅くて済むのだ。

ストロークがあまり深く沈んでしまうと小指間の移動時に肉が挟まったりして上手く行かない。 


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マーク6


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マーク7  






と、このようにマーク7はアームを作ったことによって、沢山のメリットがあるのです!



が、このしのぎの長さを、指を押さえる位置を変えずに長くするとなると、キーポストの位置を遠くしなければならない。

そのまま長くすると指の動きの方向線から大きくは慣れてしまったり、Dキーに干渉してしまうためだ。


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マーク6

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マーク7は6と比べて約1センチも管体から離れている。

ちなみに横から見ると分かる通り、マーク7はアームの上にテーブルを溶接しているので、高さに関わらず、角度を調節する事ができるので、さらに押し易い。





と!いうことで、、



ここまで長く云々してきた事を一言でまとめると。



マーク7はマーク6よりも押し易いが届きにくい。


という事になります。



マーク7の方がストロークの深さに必要な角度、開けるのに必要な指の力等の面で優れている。

マーク6の持つ小指悪い所を改善しようと努力した結果、位置については遠くせざるを得なかった、、という事でしょうか。


なかなか難しいですね。



ちなみにこの小指の部分。メーカーによっても様々な作りの違いがあり面白いのです。



マーク7の様に2軸のもの、1軸だけどアームの上にテーブルが溶接されているもの。アームの長さを稼ぐために上下に分かれて2軸になっており、ポストは同じものを共有するものなどなど、、、。



マーク7のアームの上にテーブルを溶接する方法というのは特に色々な面で効果的だし、製作面でも効率的で、この後セルマーから発売される、SA80IIやserieIII、ヤマハのカスタムモデル、ヤナギサワなども同じ方法になっています。  




この部分に注目するだけでも、設計者がどんな事を考えて作ったか見えてくるのでおもしろいですよ ♫





posted by PORTE at 23:54| Comment(0) | 日記