2015年03月28日

キーの届きにくさ  〜  サックスのキーの運動を考える

サックス奏者の武田和大さんがFacebookでこんな事を話されていた。



ー「セルマーmk7は指届きにくい」発売当初から言われ続けてるけど果たして本当?mk6と比べてテーブルキーが「大きく」デザインされてるのが何故か「届きにくい」と翻訳されそのまま流布されてるよう感じます。
各指間に必要とされる「ヒラキの広さ」は本当にmk6と比べて大きいんでしょうか?
古代のCONNなどアメリカ楽器にはもっともっとヒラキの広いものがザックザクありますね。近年でもB&Sなどドイツ楽器は指貝厚くヒラキも広くて手の小さい僕には大変です。今だと流行りの台湾製楽器群も同じく。それらと比べるとmk7なんてコジンマリしたものかと。ー
                           武田和大氏のFacebookより 

下記URLはそのやり取り

https://www.facebook.com/KAZUDAI.sax.Kazuhiro.Tom.Takeda?fref=ts
                         

武田さんのお話はいつも面白く、感覚的な問題事に対する科学的な解決へのアプローチはいつも参考になり、特に音程に関する事は非常に勉強になるので、参考にさせていただいている。 

今回の件も面白く、これは自分の今の関心と非常に合致する内容で、たまたま手元にテナーのマーク6とマーク7もある事だし、調べてみようと思いました。



ということで、、、


マーク7はキーが大きく、届きにくい は本当か??


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mk6とmk7

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mk6のテーブルキー


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mk7のテーブルキー


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mk6の右手小指


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mk7の右手小指




マーク7はキーが大きく、届きにくい


これはマーク7という楽器を知っている多くの人が共通に認識している様に言われている事と思います。

キーが大きいのはテーブルキーに関しては一目瞭然なのですが、それ以外はどうなのか? そしてキーが大きいからといって届きにくいという事があるでしょうか? 押さえる部分が単純に大きいのであれば、かえって届き易いはずだし、キーが大きくなっても中心の位置が変わらなければ届きにくいという事はないはずです。


マーク6と比べて流通量が少ないマーク7は数そのものも少なく、多くの人がイメージだけでそう語っているのではないでしょうか? 確かに大きいと重たいとか、動きが鈍いのでは?といったイメージは浮かんできます。
がそれは届きにくさとはまた違う話。


本当に届きにくいのか?届きにくさとはなんなのか?  




少しつっこんで検証してみたいと思います。






届きにくいとはどういった状況の事か?




まず ”届きにくい” という状況を整理します。



実はこれには言葉通りの意味と、別の意味とが、両方とも混在している様に思えるからです。


まず言葉通りの意味で解釈すると、


届きにくい という状況は 距離が離れている ということなのだけれど、そもそもが感覚的な問いであるためか、別の要素を「届きにくいこと」と解釈している場合、混同している場合が見受けられるからです。




平たく言うと、「押しにくい」 事から来る感覚的な煩わしさを 「届きにくい」 という様に理解されてしまうのではないか?という事です。




実際こういった話になった時に、押さえ易い、とか、心地悪いとか、バネが強いとか、 様々な要因をごちゃまぜにして本筋の話がどこかに行ってしまうパターンが多いです。



そこでここではまず、「距離」に関係する事に限定し、明確に実測する事で、届きにくい状況を把握し、検証した後、一般的に「届きにくい」と解釈、混同されそうな、キーの「押し易さ」、「押しにくさ」という事、総合的な印象はどういった要因で構成されるかにもふれて話を進めていきたいと思います。





距離の定義。 





さて、届きにくいという事は 距離が遠い ということなので、



距離を測りたい。


が、、これは意外と定義が難しい。



どこからどこまでを距離とするのか? 



キーの間隔を計れば良い様に思ってしまうけれど、


キーの間隔というのは横方向にしか対応しない1次元での話であり、実際には3次元の


縦、横、高さ

の距離もそれぞれ関係してくるからです。




簡単に考えた時に、サックスの場合それぞれ方向性は”届きにくさ”に対して下記の様な影響を与える物と思われます。





 キー回転軸と垂直方向の向き、指貝の奥行き。 この距離が遠いと指を伸ばさなければならないため、届きにくい。



 キー回転軸と平行の向き、指貝の間隔。この距離が広いと指を広げなければならないため、届きにくい。


高さ
 キー回転軸に対して高さ方向に垂直の向き、キーの開き、指貝の厚さ、管体の幅。 ここが大きいと手の平全体を広げなくてはならず、届きにくい。


IMG_2904.jpg





このそれぞれの向きに対して、離れている2点の間隔を距離として計りたい。
一つの点は各指貝の中心ということで間違いないが、もう一つをどこに設定すればよいのだろう?



重なるけれど、一見各指貝中心どうしで、それぞれの差を計れば良い様に思えますが、それでは各方向の一次元的な動きでしか検証する事ができず、例えば「縦は近いけど横は狭い」とか「縦横はちょうど良いが高さが遠い」といった例を数字で説明する事ができません。



それぞれの点に対応する共通の点(座標)を定義し、その基準点とそれぞれ指貝中心の縦、横、高さの距離を測らなくては、つまり3次元的な座標を作らなければ距離を説明する事はできないはずです。



さて、、、
どこを基準点とするのか?





基準点探し



それでは基準点を探したいと思います。




そもそも 届きにくい とは 距離が遠い という事と説明しましたが、
もっと細かく言うと 指貝の位置が指から遠い という事で、手、指の動きが前提となっている問題だということを忘れてはならないはずです。



という事で人間の指を対象に手を観察する事にします。


IMG_2895.jpg


自作のレントゲン写真  笑





手の大きさ、指の長さはだれ一人同じ人はいませんが、人間として動かし方、力学的な動作は全ての人間において共通であるはずです。

たまに超人的な方もいらっしゃいますけど。。。



そこで指を実際のキーの動きに合わせて動かしてみる。



IMG_2896.jpg

脱力している状態


IMG_2903.jpg

キーを押したイメージ。 親指は撮影上邪魔なので横にある。



 
指というのは多くの稼働部がありますが、どの指も一様に一方向に向かって動いている事が見て取れます。

手のひらの関節のみ横方向に若干動くが、キーを押す動作というのは基本的に指が内側に折り曲がる動作であり、折り曲げ動作は一方向にしか動かない。 
これは手の関節が手首を中心とした扇形の骨の構造になっているからです。親指だけは関節が一つ少なく、横向きに生えているため、他の4本とは違った動きをする。 この扇形である部分の延長線上に指の運動の方向が存在し、それ以外に動く事は難しい。



この指のおり曲がった先がつまり指の運動の中心点であるということで、

運動方向から大きく逸脱している場合は 届きにくい 状態であるという事が言える。  

また運動方向が一致していても、距離が遠いと 届きにくい 状態である という事も言える。


IMG_2668.jpg



ということで指の根元であり、各指の運動方向の出発点となっている手首を基準点として定めたい。 


がしかし、、運動的には手首なのだが、キーの距離を測る際にはふさわしくない。


手首内のある一点を定める事は難しいし、手首の中に定規を入れるのは痛いし、動いてしまい正確に数値を出す事が難しいからです。


そここで親指さんにお願いする事にします。

親指は管体を支える役目として、そしてサックス演奏上の指達の親分としてサムフックに鎮座しており、親指は動かない。また手首の運動方向の中心点から多少ずれているとはいえ、程近く、実際に演奏する際には手首というよりも親指を支点として握り込む意識や包むといった意識で演奏する事もあるので、親指は基準点として妥当と思う。

この親指は動かないため親指の座るサムフックの中心点を今回の距離測定の基準点と定めた。

IMG_2910.jpg

横からも観察すると折り曲げる運動(キーを押す運動)横方向から見れば手首では無く親指に向かっているし、基準点を親指とすることにますますの正当性を見つける事ができた。 (実際には親指と手首の間に存在している物と思われる)



距離を測る


さて縦、横、高さを親指を基準点として距離を計測すれば良いのだけれど、
今回は二つのモデルを比較するだけなので、正確な座標を求めるというよりも、比較ができれば良い。
そこで親指から各指貝までの直線距離を測る。



基準点から指貝中心点までの直線距離というのは3次元的な”斜め” なので、縦、横、高さ すべての要素をあらかじめ含んでおり、実際に扇状に稼働する指の動きの方向線とも少し中心点からずれるとはいえ、おおよそ合致する。

IMG_2905.jpg

図にするとこういう事なのだけど、、、分かりづらい、、、。


とはいえ、参考までに縦と横、は定規と一緒に撮影した画像を載せておく。 高さについてはキーが手の運動方向に合わせて傾斜している箇所もあり、キーポストやサムフックによって上手く計測する事ができないので省く。


また、ここまで正確に定義付けをしておいてんんともですが、、時間の都合上、右手だけ計る事になりました。
右手だけで大体自分の考えている事の仮説と一致したからです。





マーク6は製造番号224***
マーク7は製造番号241***

マーク7は”初期”と言われている物で、右手のテーブルキーが少し後期の物と比べ小さい。
比べる対象の年代がもっと離れていればなお良かったのですが、今回はこれにて。


計る前に変わる可能性のある前提条件を二つとも同じにしておく。
キーの開き加減です。

キーの開きとは,,

以下参照

開きについて
http://musicporte.com/note/glossary/glossary.php


のことだが、
テナーサックスはFを8.5mmとしてあわせます。
開きの理想の数値の話はここでは置いておき、ふたつのキーの開きを一緒に設定した。ここが違ってしまうと他の距離も変わってしまうためです。





果たして結果は、、

IMG_2863.jpg

mk7



IMG_2860.jpg

mk6

これは横方向をいちおう計っている所。




肝心なのは次。

IMG_2881.jpg

mk6

IMG_2880.jpg

mk7


ノギスで親指サムフックの根元中心から指貝までの直線距離を測っていく。


結果はこの通り!!!!!


mk6
サム / F 71
サム / E 72
サム / D 80
サム / E♭ 85
サム / C 100



mk7

サム / F 71
サム / E 72
サム / D 80
サム / E♭ 95
サム / C 112

単位ミリ




ということで、、、、


結果、

マーク6とマーク7ではほぼ変わらないが一点だけ違う点がある。

小指だ。



マーク7の方が小指までの距離が約1センチ長いのです。



この小指という点がミソだと感じます。小指は他の指全体に与える影響が多き指だからです。




試しにこれを読まれている方は小指の関節だけ曲げる事はできますか?

大抵の人間は薬指も勝手に動き、中指までもが少し影響されて動いてしまうのではないでしょうか?

このように小指は指全体に与える影響が大きく、他の指も含めた”手”全体の印象もだいぶ変わるという事になる。

小指と親指だけを動かそうとすると手の平全体もつられて動いてしまう。

この辺は個人差も激しいと思いますし、個人の印象、個人の感覚は人にそれぞれですが、小指が他の指と連動してしまう人は手のひら全体の問題としてとらえてしまう事もあるのではないでしょうか?


IMG_2906.jpg

ちなみに私は小指の動きが悪く、テレフォンマークすらできないのです。


IMG_2907.jpg

がんばっても薬指がついてきてしまう、、、、




という事で、

マーク6とマーク7の右手キーを比べた際に、親指から小指までの距離が1センチ長い。

事実が分かりました。

よって

マーク6とマーク7で比べた場合、マーク7の方が小指が届きにくい。 

という事が言えます。 

さらに

小指が全体の印象に大きく作用するのなら、他の指の印象としても、大きく感じる可能性があり、マーク6とマーク7で比べた場合は届きにくいと感じる。

ということなのかもしれません。




他のメーカーは調べていませんので、あくまでもマーク6とマーク7を比べた時の話として強調しておきます。




うむ。。。


意外にも、、、、、、距離だけの話に限定すれば、本当に届きにくいという事が分かってしまった。イメージ論だと思っていたが違った...



ではなぜこうなったのでしょか?



距離的には届きにくいという事は分かったが、押し易さはどうなのだろう?

なぜ小指の位置が違うのか?なぜ小指はマーク6は軸が一本でマーク7は軸が2本なのであろう??

そこには小指のキーの形状から浮かびあがってくる、設計者の意図が隠されてあったのだった。。。。



ででん!


続く。。。。
posted by PORTE at 16:51| Comment(0) | リペア

2015年03月24日

リペア資材の買い出し

定休日を利用して買い出しに出かけました。






サックスの修理に必要な道具や、パーツなどなかなか普通に売っているものではありません。







こういった道具やパーツは管楽器専門の修理資材の問屋さんにお願いするか、自分で探してストックしておく他、自作の物もかなり多いです。 






凹みだしに使う道具などは自作ですし、修理で一番使う頻度の高いプライヤーもサックスの形状に合わせて作ったものです。





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例えばこれも後述の御徒町の店で購入後、自分で形を整えたもの。左が売っているままの物で右がそれを整えたもの。






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あとはサックスのレバーとキーの接続部分のチューブも、適度な固さを持ち、滑らかに駆動するものを求めた結果電気資材の絶縁用チューブを使用しています。







こういうコアな商品が売っているのが秋葉原〜御徒町エリアなのです。






秋葉原も今やすっかりアニメ産業、アダルト産業が幅を利かせておりますが、いまだに揃わない物は無いと言われている程の電気街は健在。



ガード下の電気街もさることながら少し先に歩いて大きなゲーセンの隣に位置するこのビルが怪しさあふれる魅惑のスポット。







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東京ラジオデパート。





ネジ屋、真空管屋、電球屋、コード屋、LED屋、スピーカー屋、、、
ありとあらゆる電気系の資材の数々、、、。


それぞれ専門性の高い店が軒を連ね、一つのビルを形成していたりします。  




窓枠に合わせて文字の大きさが全く不揃いな所や謎の文字体がなんとも味わい深い。。








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中はこんな感じ。






嘘かまことか、知識のある人間がここで売っている部品を集めて組んでしまえば簡単に盗聴、盗撮の機械、果てはミサイルの誘導装置なども作れてしまうので、各国のスパイや工作員も日がなここに集まるという噂。本来そういう機械は法律で売ってはいけない事になっているのだけれど、部品で買って勝手に組んじゃうのでは仕方なし。





そんなきわどい輩を相手にしているせいか、薄暗い所で働いている親父達はみな一様に寡黙で難しそうな雰囲気を出しており、こちらに知識が無かったりすると平気であしらわれるという、小売業にはあるまじき態度。 笑





だけどもそれをも含めての魅力。




探していた物の規格が海外の物で、海外のサイトにしか売っておらず、取り寄せるのメンドクサそうだな、、と思っておりましたが、お目当ての専門店に「これと同じ物ありますか?」と聞くと一発で出てきました。 


さすがです。



 
また、もしすぐに見つからなかった場合でも、、



「すみません。これこれ、こういうのありますか?」


「、、、、(ジーーーッ)、、、、そりゃ3階のナントカさんのとこだな、、、、」


「ありがとうございます。」




という風に、人を伝って目当ての物にたどり着けるというリアルRPGを体験することができます。









そして実際に物を見る事で、「お!これつかえそうだな!」とか、「これ使えばこういう作業の時はかどるなあ!」といった色々な工夫やヒントの種が思い浮かぶという事も、重要なことだと思っています。



小学校5年生時の夏休みの自由研究でラジオを作った時以来、年に数回は必ず訪れる場所です。





秋葉原の次に向かうのは御徒町の西側のエリア。



山手線一駅分ですからそのまま徒歩で向かいます。




JR御徒町駅より東側のエリアは実は宝飾街で、宝石屋やジュエリーを扱う問屋が多数軒を連ねている。



そうなるとジュエリー関係の商品も扱うお店もここには沢山あり、


宝石を入れる豪華な箱だけを扱う店だったり、ネックレスのチェーンを扱う店だったり、


指輪やピアスを作っている職人のための彫金道具をそろえいている道具屋もここにあるのです。



ジュエリー製作というのは金属を削ったり磨いたりする工程で、殆ど楽器に通じていて、共通の道具が沢山あり、



ヤスリ、ハンマー、バフ、プライヤー、メッキ機械、旋盤、等等、、、 



金工に必要な道具はあらかたここでそろえられます。


ここでは銀の板、銅の板、真鍮の板といった素材からも買えるので、これを使ってリガチャー作ってみようかと考えてみたり、、。




おなじみの道具の他に、真鍮をわざとさびさせる液体。銀の黒ずみがあっという間に無くなる液体や、マスキングした所以外を腐食させる事のできるエッチング液など、今後使い方を学んで試してみたい物も多数。。。





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お目当てのハンマー等を購入後、フリーのお買い物タイム。



そのまま宝飾街を北に進んだ所に位置する上の駅の西側は実はコリアンタウンになっていて、その中にある「第一物産」のキムチが絶品!





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東京のコリアンタウンといえば、新大久保が有名なのだけど、有名な所は観光客向けになってしまっていて、新大久保のキムチだったりサムギョプサルはたいした事無い物が多い。 



新大久保の学校と楽器屋に勤めて約10年間、老舗コリアン店と韓流ブーム時に本国から大資本を抱えて来た新興コリアン店の戦いを目の当たりしてきたし、友達になった韓国人からそう教えてもらったから間違いでしょう。笑




韓流好きのおばさま、お姉様には是非教えてあげたいおススメスポットです。
posted by PORTE at 15:54| Comment(0) | 日記